愛しくて、愛しくて

犯してしまいたい程愛しくて…

壊してしまいそうだ…




『破壊衝動』


「あの…八神さん?どうかしましたか?」

先程から黙って一点を見つめる庵を、真吾は不思議そうな顔で見つめた。
その声に、庵はハッと我に返った。
今日は久しぶりに真吾を家に招待することができた。
あの煩いバケモ…いや、年増女共がいつも居るので
中々二人きりになれず、招待することが出来なかったのだ。

「いや…何でもない…」

そのそっけない返事に真吾は少し頬を膨らませた。

「八神さん、最近俺に対して冷たいッスよ…俺の事キライになったんですか?」

いつも自分の話に短く素っ気ない返事ばかりしかしてくれない庵の態度に、
真吾は子供のように頬を膨らませたまま、プイッと横を向いてしまった。
庵は驚いた。
いつもそんな風な受け応えしかしていなかった。
でも、真吾は自分の気持ちをわかってくれているものだと勝手に思っていた。

「真吾…こっちに来い」

真吾は言われるがままに、庵の隣に座った。

「こっちを向け」

まだ膨れて横を向いている真吾の肩に手を回し、自分の方へ引き寄せる。

「何ですか?」

まだ不機嫌な真吾の耳元で庵はそっと囁いた。

「証明してやろうか?」

え、何を…?
そう聞き返そうとした真吾の唇を、庵の口が塞ぐ。

---もう、我慢はしない、止められない。
殺意にも似た感情で頭が一杯になる…。
オロチの血に支配された時に似ている。
理性の壊れていく音がした。---


クチュクチュと卑猥な音が静寂な室内に響く。
口内を舌で愛撫され息も絶え絶えな真吾は、
挑発的な態度を取ってしまった事を酷く後悔した。
何であんな事を言ってしまったのだろう・・・。
ちょっとからかっただけのつもりなのに…

「あの・・・や、八神さんちょっと!!」

今度は真吾の首筋に口が来ていた。

「あ、明日学校なんですけど…っ!!?」

ガリッ!!
鈍い音がした。

「い゛っ!!」

加減も無く噛まれた首筋からは、血が流れていた。
(今日の八神さんは何か変だ…いつもはこんな事しないのに…)
庵は滴る血をまるで吸血鬼の様に舐めとった。
その仕草を見て、真吾はぞっとした。

「い、嫌です!!止めてください…っ!!」

身体を捻って抵抗しても、庵はしっかりと掴んで離さない。

「何故だ?お前が望んだ事だろう?」

「俺が…望んで…?」

こんな事を…?
違う…っっ!!
誰か…助けて…

「こらぁぁぁ!!!八神ィィィ!!!真吾君に何つー事してくれてんのよ!!!」

バキーッッ!!!!

美人秘書'S二人分の空中ドロップキックが炸裂する。

「私達が買い物から帰って来た途端、何で八神が真吾君を襲ってんのよ!!
真吾君の玉のようなお肌に傷でも残ったらどうすんの!?アンタ責任取れるわけ!??」

ギャーギャーと捲くし立てる二人だが、吹っ飛んだ庵は壁に埋まっていた。

「んもぅ!!ヘタレだからって安心してるとス〜グ、暴走に逃げてさ〜
危ないったらありゃしない」

真吾の首に絆創膏を貼りながら、バイスはため息をついた。

「痛かっただろ?悪いね〜、ちゃんと教育し直しておくからな」

横でブツブツ、これだから発情期の野郎は…
などと文句を言っているマチュアとバイスを他所に、
真吾はじっと黙って考えていた。

アレは・・・

本当に暴走?

もし、あの時マチュアさん達が帰って来ていなかったとしたら…

帰る時の庵を見て、真吾の脳裏に不安がよぎった。
狂気に満ちたその瞳で…
口だけ動かして庵は言った。

(壊したい程お前を愛している)

『破壊衝動』


―END―


最初はまた後で後悔するくらいの甘々を目指そうかと思ってましたが、
途中からちょっとMADなヤツが書きたくなりました。
でも、最初なんだかほのぼのだったのに…
色々グダグダになってしまいました…
ま〜た、上手くまとまらなかったなぁ。(汗)
『食べちゃいたい程愛してる』っていう方が正確な様な気もしました。
エロはお姉さま方のお力で阻止されました。(笑)
こんなものにギャグ入れるなよ、と自分突っ込み。
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