「『真吾ちゃんと彼氏ーズチーム』エンディング」
…KOFXI。
デフォルトだと『京&庵チーム』、実質的には『真吾ちゃんと彼氏ーズチーム』は、見事に優勝した。
「わははははッ!やっぱりオレ!元祖主人公のオレたちが優勝に決まってるよな〜、真吾v」
「そうですよね草薙さん!やっぱりKOFには草薙さんがいないとv」
…確かに元祖主人公は京だが。
実のところこのチームが優勝できたのは、ひとえに真吾の活躍があったからだったりする。
まず一番手で京が必ず負け、次に庵が何とか二人目のゲージを良くて半分、だいたいは三分の一まで減らしたところで負け、結局真吾が残りを片付ける。
場合によっては真吾が三人抜きして次の試合に進む、どの辺が「京&庵チーム」?…だった。
…そして。
今回の優勝後、例によって今年こそ!!京は真吾を食おうとしていた。
『へっへっへ…今年こそ食うッ!食うからな真吾vv紅丸や大門やガングロオロチや甘党ウドやモヒカンウドやバケモノオサゲに邪魔されるのも最後だッ!わーっはっはっはv』
なーんて食う気満々で真吾に襲い掛かろうとした、まさにその時!
「…うッ!」
二人の背後で、庵が吐血していた。
「…あれ、どーしたんですか八神さん?鼻血ですか?胃潰瘍ですか?それとも…………暴走ッ!?ギャーッ!!」
真吾の読み通り、庵はまた「グオオオオー!!」とか言い出して暴走してしまった。
「くくくく草薙さんッ!!何とかして下さいィ!!怖いよー!!」
半泣きで真吾が京に抱き着くと、極悪お師匠様は、
「しめしめvコレでオレ様がこの暴走バカをカッコよくぶっ殺せば、真吾は今度こそオレの物ッ!!…オレと真吾の夜のために死ねや八神ィ!!くらいやがれーッ!!」
…と、全ての考えを口に出しながら(京サマと真吾ちゃん的には)カッコよく大蛇薙を放った…が。
「ウガッ!」
これまた華麗なガードでかわされてしまった。
「全然駄目じゃないですか草薙さん!何とかして下さいよぅ!!」
可愛い弟子に『全然駄目』なんて言われ、お師匠様は「今の台詞はぜってえ後悔させてやるッ!押し倒した後は覚えてろ真吾ッ!」とか思いながら、次は無式で暴走バカを丸焼きにしてやろうとした…のにも関わらず。
「ガッ!!」
…暴走バカの葵花・一撃目で…ノサれてしまった。
「きゃあああ!草薙さんッ!?」
一撃でお師匠様をノシてしまったチームメイトを前に、真吾はもんのすごく!怖かった。怖いなんてモンじゃない。
でも黙ってたら、自分もこのお師匠様と同じ運命をたどる訳で…。
「…く、く、く、草薙さんの敵はし、し、し…真吾の敵ッ!や、八神さん、大人しくして下さいッ…」
とか言いながら思い切り腰が引けつつも、師匠のために『敵』に立ち向かおうとした…が、しかーし。
「グオオオオーッ!」
「きゃあああああッ!やっぱり怖いよーッ!!」
一言吠えられただけで、頭を抱えて座り込んでしまった。
…怖がりな事この上ないが、少なくともその辺が草薙さんにはいいのだろう。
それでも真吾が怖々後ろをうかがうと…庵はぶっ倒れた京の回りを歩き、
「ウガ?ウガッ!」
などと満足そうにうなずいている。
『どどどどどどーしよう!?次はこっち来るよぅ!!わーんやっぱり八神さんなんてチームに誘うんじゃなかったぁ!真吾のバカッ!バカぁーッ!!』
なんて大後悔をしていた真吾の背後に、…いよいよ庵が寄って来た。
「うわあああ!もう真吾の人生終わりですかッ!?うわーん父さん母さんッ!先立つ不孝を許してね………って、えええッ!?ちょっと!何すんですか八神さぁぁん!?」
てっきり食われると思っていた真吾は、急に庵に担ぎ上げられた。
「ウゴっvv」
「…はい?何か嬉しそうに聞こえるんですけど………えッ!?」
庵は真吾を自分の肩に担ぎ上げると、…凄い勢いで走り出した。
「くくく草薙さぁん!!助けて下さぁあい!!くさな…」
その声はだんだんフェイドアウトして行ったという…。
――30分も走った後。
「…グフ」
庵は立ち止まり、その場に真吾を降ろした。
「もももももしかして、ここで真吾を食う気ですかッ!?真吾は八神さんの非常食になるんですかッ!?それともお弁当だったんですかッ!?うわあああッ!やっぱり八神さんなんてチームに誘うんじゃなかったあ!!」
とか、真吾が後ずさりしながら言うと、庵が近づいで来た。
「ううう…食べるならあまり痛くしないで下さいッ!その前に真吾なんて食べたらマズいし食あたりしますよッ!」
両手を合わせてどこのだか知らないカミサマにお祈りしている真吾に、庵は、
「ウガ!ウガ!」
とか言っている。
「はい?何ですか?」
どうやら、ジェスチャーで何かを訴えているようだ。
見ていると、まるで、
「正座しろ」
と訴えているように思える。
「…正座して欲しいんですか?」
暴走庵がうなずく。真吾は素直にその場に正座した。
「…?」
正座した真吾の腿を、暴走庵が触る。
…今度こそ食べられるッ!!
とんでもない恐怖に襲われるが、真吾は「逆らったら食われるのが早くなるかも知れない」と思って、そのままでいた。
――と。
暴走庵が、真吾の腿に頭を乗せて来た。
まるで、猫が丸くなっているようなポーズになる。
それから一分もたたないうちに、…「怖い暴走した八神さん」は、真吾のひざ枕で眠り込んでしまった。
「…寝ちゃった…。もしかして疲れてたんですか?八神さん」
声をかけても、寝息しか聞こえない。
「起きたら元に戻って下さいね」
さっきまでの騒ぎはどこへやら。
真吾が見た庵の寝顔は、とても穏やかだったという…。
「―む?」
軽く30分も過ぎた頃。
「あ、やっと起きたんですね八神さん…」
目を覚ました庵は、ちゃんと暴走状態ではなかった。
しかし気付くとライバルの弟子のひざ枕で眠っていたのは気まずいのか、慌てて起き上がる。
「矢吹、ここはどこなのだ」
「真吾の方が聞きたいですよ、八神さんが暴走してここまで真吾を連れて来たんじゃないですか…。あいたたた、足しびれちゃった」
「…オレは知らん」
「本当ですよー、八神さんはいきなり暴走して草薙さんをノシちゃって、真吾をここまで連れて来て、寝ちゃったんですってば」
「…知らん物は知らん」
言っても聞いてくれそうもない。…真吾は溜息をついた。
「とにかく帰りましょうよ。もうKOFは終わったしー、草薙さんが心配だし…」
「京など野垂れ死ねばいい」
「何て事言うんですか八神さんッ!ヒドいですよ!」
「オレは奴が大嫌いだ」
「それはみんな知ってます。…でも、そろそろ帰りましょう?いつまでもこんなところにいられませんよ」
「……二人なら……」
「え?何ですか?」
「……帰るぞ」
庵はさっさと歩き出してしまう。慌ててその後を追う真吾。
「待って下さいよ八神さぁん!おいてきぼりにしないで下さぁい!」
「…する訳がなかろう」
その言葉は、まだ真吾には届かなかった。
…一方。
―つんつん。
―つんつん。
誰かが、自分をつついている。
意識が戻った時、京はまずそれに気付いた。
全然止める気配もない。
「テメエ!人様をつついてんじゃねえッ!!」
がばッ!と起き上がると、そこにいたのは緑の炎使いの、いけすかないヤロウ・アッシュ。
草薙京サマ的『会いたくない奴』上位ランクインのヤロウである。
「…なーんだ。生きてたのか…残念だなあ」
…ムカつく台詞を吐かれた。
さらに片手に木の枝を持っている。…それで自分をつつき回していたらしい。
「大会も終わったし、矢吹真吾クンをデートに誘おうと思って探してたのに、どこにもいないんだけど。…キミ、知らない?」
新たな敵の出現!!
…京の額に『ビシィ!!』とか音を立てて、青筋が浮いた。
「…テメエもか…テメエも真吾狙いかよッ!」
京が指差すと、アッシュはニヤッと笑う。
「言っとくけど、僕は誰にも負ける気しないんだよね〜♪真吾クンは僕の物だよv」
「誰がテメエのだッ!!真吾はオレのに決まってんだろ!」
「どーだか」
「渡さねえからなッ!」
「僕の台詞だね」
等という不毛な言い争いをしていて、京は気付いた。
―どこぞのウニョウニョと真吾が消えたことを!!
「ヤロー!!どこだッ!?出てきやがれ八神ィ!!真吾はどこだーッ!?」
物凄い勢いで走り出す京。
不敵〜な笑いを浮かべるアッシュ。
加えて今回書かれてなかったり、XIには出てないが真吾スキーだったりする…そんなヤローは何人いたモンか!
しかぁし!
とりあえず、今一番リードしてるのは八神さんのようだ…。